アパレル業界が産むロス。着物は代々譲られている。廃棄しないこと、廃棄素材を活かすことが当たり前になる時代へ

2020/11/29

アパレル業界が産むロス。着物は代々譲られている。廃棄しないこと、廃棄素材を活かすことが当たり前になる時代へ

かつて1枚の服を大切に着続けた時代がありました。破れたら繕って。兄弟がいれば“お下がり”という言葉も。ファストファッションがうまれ、服は使い捨ての時代になったように感じています。もちろん今も、服を大切に来ている方もいるでしょうし、気に入ったものに愛着をもって過ごされている方もいらっしゃると思います。

アパレル業界ではコロナ禍になる前から、大量な服が廃棄されているというニュースが出ていました。コロナ禍でその流れはより大きくなっています。食品ロスの問題も大きな問題ですが、アパレル業界の衣料品ロスも考えなければならない問題です。

SS(春夏)、AW(秋冬)として、新作は発表されます。新しいデザインが発表されれば、前年の商品は型落ちになります。それを古くもう選ばれないものとするか? その年の記念のものと考えるか? その考え方だけでも、服に対する意識が変わります。食品と違い服には消費期限も賞味期限もありません。流行りがあるだけです。服の廃棄は、誰のどんな基準で行われているのか? がとても気になります。

服の廃棄が注目されたのは、2018年7月。“バーバリー”が3700万ドル相当(約42億円)の売れ残った商品を焼却処分したことが伝えられたことがあります。時期を逃したのであれば、食品のように価格を下げて販売すれば、という意見もあるでしょうが、高級ブランドであればあるほど、価格を下げることには抵抗があります。ブランド価値です。価格を下げて販売することはブランド価値を下げることになるからです。アウトレットが郊外にしかないのも、都心の店舗と競わないためです。

企業としては大切なことかもしれませんが、この考え方がある限り、「つくる責任 つかう責任」を果たせるとは思えません。アパレルは、生地を織るところから始まり、染色や縫製など過程を追うごとにロスが出ています。また、サンプル品止まりで販売されないデザインもあります。過去にサンプル品を扱った販売会に行ったことがあります。ブランドのタグが切られ、かなり安価で販売されていました。かなり尖ったデザインでしたが、気に入ったものがありましたので購入しました。当時ヘビロテした記憶があります。そんな風に誰かの手元に届き、使われるのであればそれはロスにはならないのです。

コロナ禍で厳しくなっているアパレル業界。外出が減ることで服の新規購入も減っています。コロナは予想しなかったものなので、時期的には通常通りの数で作られていたと思われます。そうなれば、より廃棄の数は増えているでしょう。それでも、2021年の新作は生まれます。そして、すでに2022年AWも出ています。生地から始まるファッションは、スタートが早いです。収束が見えないコロナ禍であっても、止めることができないこともあるでしょう。ただ、考え方をどこかで変えなければならないと考えています。

このまま服を作り続け、売れ残りを廃棄し続け、CO2 を排出し続けていいのでしょうか? 廃棄される衣類を新しい服にするためのプラスティック原料にする仕組みも始まっていますし、タレントのMEGUMIさんは、廃棄衣類から作られたドレスをインスタにアップしています。

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少しずつでもアパレル業界も変わっていくと信じています。日本の民族衣装でもある着物は、染め直しを行うことで新しいものに生まれかわります。また、サイズが合わなければ仕立て直すこともあります。そのような文化を持つ日本だからこそ、余計に衣類の廃棄について考えてしまいます。

記事執筆:伊藤緑(広報ウーマンネット 代表)