食品ロスと同時に、日本で餓死が増えている。日本に残る“普通”という感覚。
食品ロスと同時に、日本で餓死が増えている。日本に残る“普通”という感覚。
「食品ロス」と「餓死」が同時起こる国
子どもの貧困。餓死が起こる日本。最近のニュースを見ていると、ここは本当に日本なのだろうか? と思うことがあります。
先日、子どもの貧困について書かせていただきましたが、改めて調べてみると子どもだけでなく日本では大人の餓死も増えているというデータが出ています。日本は豊かな国で、新興国への支援のCMがれていますが、それ以前に自国の現実を知るべきではないでしょうか? “格差”のひとことでは片づけられない現実。コロナ禍で、これまで当たり前に描いていた将来を急に奪われた方も多く、拍車がかかったのは事実ですが、コロナ禍前から起きていたことのようです。
コロナ禍前からある、全国フードバンク推進協議会・“おすそわけ”する支援の輪・生活補助
「食品ロス」問題と「餓死」が同じ国で同時に起きているのは本当に悲しいこと。問題に対しての取り組みをされているNPOや企業、個人の方が多くいらっしゃいますが、完全な解決には至っていません。未来の大人たちに向け、私たちは融通の利かないルールや仕組み、偉い人たちへの忖度を多くのハードルを越えて、変えていかなければなりません。
コロナ禍前に、2019年8月に「日本で餓死するなんて…奈良の僧侶たちが“おすそわけ”する支援の輪」という記事が出ています。これは2013年に起きた「大阪母子餓死事件」がきっかけに立ち上がったボランティアです。また、日本には2015年に立ち上がった「一般社団法人全国フードバンク推進協議会」があり、各地に団体が立ち上がっています。そのひとつのセカンドハーベスト・ジャパンでは、食品ロス(フードロス)を引き取り、必要な人へ届ける活動を行い、多くの人の毎日を救っています。フードバンクを利用できる人は、経済的に苦しい人、失業者・ひとり親家庭・高齢者・障害者・対日外国人難民と書かれています。失業者はコロナ禍で増えていますし、ひとり親家庭も厳しい状況になってしまった方も多いと思います。ただ、情報にリーチできていない人もいれば、利用することに抵抗がある人も多いようです。利用することに抵抗があるのは、日本には根拠のない“普通”という意識があるように感じます。生活補助の申請にも抵抗がある方も多いようです。2020年10月9日の西日本新聞に「申請ためらう人も…命つなぐ生活保護 働きながらでも受給可能」という記事が出ています。正直、私もある時期、仕事をしていたけれど収入が少ない時期がありました。ある意味、自分が選んだ仕事のために、収入が減り貯金を食いつぶしてしまっていました。その時住んでいた区役所から届いたのは、生活補助に関する書類でした。受け取った時は正直驚きましたが、社会は守ってくれていることを感じました。幸い、その後、その仕事から離れ、正しい収入を得られる仕事を複数行うことで乗り越えましたが、このことは経験した人間にしか分からないことだと思います。これまで自分が根拠ない“普通”だと思っていたのに、そうでないとジャッジされたときの気持ち。ただ、それを受け入れる気持ちは今、必要だと思います。支援を受けながら、その状況から抜け出す方法を積極的に考えることで解決できることがあるはずです。
普通の定義なんてない。
現在(2021年1月)放送されているTVドラマ『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』の主人公である20代女性の設定は、「仕事も恋愛もほどほどに。人並みで普通の幸せを手にしたい」です。“人並みで普通”は、いったい何か? を考えさせられます。多様性が謳われる時代に、“人並みで普通”は定義ができない言葉になりました。自分を無理に普通だと思う必要もありませんし、特別だと思う必要もないのではないでしょうか? 生活が厳しいときは、NPOや行政に頼る勇気を持つこと。持ってよいと知ることが大切だと思います。
2021年1月3日には「日本なのに「餓死」が増えている? データが語る「ヤバすぎる未来」」、1月12日には「炊き出しに…「所持金6円」32歳男性なぜ」という記事が出ています。2020年は多くの人の人生が変わった年。だからこそ、意識も変えていかなければなりません。苦しいときは頼って、いつか余裕ができたら何らかの形で返す、ということも素晴らしいことです。
コロナに罹患したことで、生活が変わってしまうのは理不尽でしかない。
2021年1月10日の「入院待機者の悲痛な声「コロナで死ぬか餓死するか」」。これは切実でした。しかし、これは他人事ではありません。また、風評被害を気にして、罹患したことを隠している方が多いことも知りました。1月15日に出された「2軒隣のご近所さんがコロナ感染!その1カ月後には「売家」の看板が…痛感した「正しく恐れる」ことの大切さ」は、コロナに罹患する怖さと同時に、それによって起こる周囲の変化。誰もが当事者になる可能性があるにも関わらず、ここまで人を責めてしまうのはなぜか?と、とても悲しい気持ちになりました。義理人情と言われた日本はもうありません。芸能人の方は、感染を公にされます。そういう方に対しては、比較的早く治ってください、という好意的な言葉が多いにも関わらず、一般の人が掛かると全く違う状況になる。昨日までの生活が一変し、日常生活が送れなくなる方も多いように感じます。まさに「正しく恐れる」ことの大切さを知ってほしいです。
“普通”や“自分は大丈夫”と思い込まず、支援を受けること。
幸い、私自身は現在、毎日の生活に困ってはいませんが、これはいつ変わるかわかりません。過去に近い経験をしたから、未来の不安定さは常に覚悟しています。「食品ロス」と「餓死」が同時に起こる国・日本で生きていくためには、必要なときには頼る。そして、いつか返せるときがきたら何らかの方法で返す。そういうったペイフォワード(Pay it Forward)=ある人物から受けた親切を、また別の人物への新しい親切でつないでいくこと、ではないでしょうか? 今、世界は苦しい状況にあります。だからこそ、少しずつの優しさを持ち合えたら、と思います。
そして、節分が近づいてきました。今年は2月2日です。恵方巻の大量廃棄のニュースがないことを祈るばかりです。
記事執筆:伊藤緑(広報ウーマンネット 代表)