SDGsを楽しくカルチャーに。ロンドンの初音ミク、青髪ロングのアシュニコは、女性問題やLGBTQを歌っている。

2021/02/06

SDGsを楽しくカルチャーに。ロンドンの初音ミク、青髪ロングのアシュニコは、女性問題やLGBTQを歌っている。

人は、楽しいことしか続かない・続けない

このサイトを見ている方は、当然SDGsという言葉も内容もご存じの方ばかりだと思いますが、2015年に採択され6年目となろうとするのに、まったく知らない方が多いのが現実です。それはなぜか? について考えてみました。

ちなみに、『鬼滅の刃』がなぜ爆発的なヒットになったか、理由はひとつではありませんが、いろんな意味で面白いと思う人が多かった、魅力的だったことがあると思います。また、ある程度のブームになると、それを知らないことを恐れるという人の心理も働き、それまで興味がなかった人も観なければ、という心理的作用も起こります。時期的にはコロナ禍が後押ししたということもありますね。コロナ禍では、「あつまれ どうぶつの森」もヒットしました。人は世の中に良いことよりも、自らが楽しいことに興味を持ちます。ドラマ『半沢直樹』も多くの人が見たと言われていますね。見ていて気持ち良いという心理かもしれません。娯楽の種類が増えた今、ブームを作ることは以前より難しくなったといわれています。より狭く深く興味を持つ方も増えました。テレビの視聴率が明白です。50%を超えるなんてことは今で奇跡です。

そして、SDGsはなぜ浸透しないのか? 上記を考えると、楽しそうじゃないから、という答えが出てきます。世の中に良いことを行いたいという気持ちがあって始めたとしても、使命だけでは続きません。そこに楽しさ興味を惹き続ける何かがない限り、気づけばやっていなかったということになります。あんなにポップなロゴなのに、日本語では「持続可能な開発目標」です。漢字8文字を見た瞬間、「あぁ、ごめんなさい。いいです」となる方もいると思います。まず、「持続可能」ってなに? 「開発目標」って何? どちらも目に見えない概念です。人は目に見えないものには興味を持ちにくいです。具体的でないからです。概念は人によって解釈が違いますから、言葉を聞いて同じものをイメージすることができません。例えば、「みかん」と聞けば、ほとんどの方がオレンジ色の丸いものをイメージします。イメージしづらいことも浸透しない理由ではと思っています。であれば、楽しくすればいい! イメージしやすくすればいい! ということを今日、取り上げたいことです。

ロンドンの初音ミクは、女性問題やLGBTQを歌っている。

青髪ロングを聞いて、誰を想像するでしょうか? これは、年代や関わっている仕事や趣味によってはまったく分かりません、という方もいると思うのですが、音楽好きな方なら、初音ミクを想像すると思います。初音ミクは、音声合成で、デスクトップミュージック用のボーカル音源です。そして、その音源のキャラクターです。16歳、身長158cm、体重42kg。なんと具体的。活動開始は2007年。レディー・ガガとのコラボレーションするほどの日本のバーチャル・シンガーです。初音ミクがあったから、音楽を始めたという方も多いと思います。音楽はとても身近にあります。50代くらいの人であれば、ウォークマンが発売された頃、もっと若い人であればiPod、そしてスマフォへと音楽は持ち歩くものになっています。線路に落ちたワイヤレスイヤホンの回収が大変というニュースが出るくらいですから。

そして、青髪ロングのリアルな女性がイギリスにいます。TikTokで200万近いフォロワーを持つアシュニコ(Ashnikko)さんです。彼女は、初音ミクと同じ青髪ロング。初音ミクとコラボした「デイジー2.0 feat.初音ミク」を2020年12月にリリースしています。そして、彼女が歌っているのが、女性やLGBTQについて。
レコード会社の彼女のプロフィールには、以下のように書かれている。
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アメリカはノースカロライナ生まれ、インターネット育ちのアシュニコ。M.I.A.、ニッキー・ミナージュ、ビョーク、ケリス、ジャニス・ジョプリンといった型にはまらず社会で活躍している女性アーティストたちから大きな影響を受けてきた。
思い切った決断で18才のときにロンドンへ移住し、たった一人でミュージシャンへの道を追い始める。「大都市でビッグになりたかったの、すぐに厳しい現実を叩きつけられたけど」と当時を振り返って苦笑している。ロンドンに来て数年はナイトクラブのバイトなどで下積み時代を過ごし、仕事中に男性から体を触られたりすることもあったという。そういった怒りを音楽に変え、青髪のアーティスト・アシュニコが誕生した。「怒りをうまく活用できたの。女性や LGBTQ の人への扱われ方に本当に怒りを覚えて。男性中心の社会や非トランスジェンダーの人たちに音楽で戦おうと必死だった。」
Warner Music Japan
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彼女が多くの人に知られるように努力した理由のひとつに“怒り”です。ネガティブエネルギーと呼ばれるものですが、それをうまく利用した人です。そして、知名度を上げていった。なった理由は、明確です。そして、彼女は女性たsおの思いだけでなく、分かりやすい見た目(青髪ロング)を使い自分を表現したのです。彼女は女性たちに“男性のために自分を小さく見せなくて良い”と言っていますし、自らを「インターセクショナリティ・フェミニスト」と名乗っています。

「インターセクショナリティ・フェミニスト」は、“様々な女性のアイデンティティとそれに伴う経験を認識することで、特権階級である白人や異性愛者などの社会的な多数派を中心と考えるフェミニズムから一線を画す”です。

SDGsを特別な活動ではなく、日常のカルチャーに忍ばせる

最近は、ドラマでもLGBTQに触れたり、男性の育休に触れたりすることが増えてきました。これは、地球への危機感を私たちが自分事と捉えるために大切なことです。日本に住んでいる限り、正直なかなか自分事にならないのがSDGsです。だからこそ、より多くの人がリーチする複数のもので伝えることが必要です。SDGs×音楽がアシュニコだとしたら、SDGs×ゲーム、SDGs×アニメなど、いろんな形があると思います。すでにあるのかもしれませんが、それがブームになっていない。教育的なものではブームにはなりません。互いが良いバランスで楽しく掛け算されること、正直難しいことではあります。このサイトでも何度も書いていますが、“格好いいから買ったら廃材を利用した商品だった”は理想的です。ただ、モノではなく概念ですので、そう簡単にはいきません。ただ、大好きなアニメで、地球温暖化のことが語られていたら、いつか地球がこうなってしまう、それは困る、そのためにできることは、という問題意識を自然に持てたらと考えています。そこには、そもそもストーリーの面白いことが必要です。アシュニコが青髪ロングでなかったら、注目されたでしょうか? というトリッキーさも当時に。

そして、前回の記事で教育が必要な話も書きました。理論として学ぶことも並行して行ってことは必要です。10代以下の子どもたちに、自分たちがこれから生きる地球がこのままだとどうなるか? を正しく伝える必要があります。それを伝えないのは、大人の逃げですから。
ポップなロゴを活かして

カラフルな色のロゴを見たときは、どんな楽しいことがあるのだろう? もしやテーマパークが17個あるの? くらいに思ったのですが、実際は分かりづらいし、難しいし、具体的に語っている場がとても少ないです。世の中に良いことをしている人は偽善者っぽいなんて思う方もいるでしょう。だからこそ、まるで歌を歌うように、ゲームをするように、映画をみるように、日常のエンターテインメントとのエンジョイ的なコラボを残りの9年でどこまでできるかも問われていると思います。

SDGsを「ポップ文化」に置きかえて解説!誕生秘話は? 何がすごい? 誰が主役?

記事執筆:伊藤緑(広報ウーマンネット 代表)