女人禁制。生理は穢れなのか?

2021/05/31

女人禁制。生理は穢れなのか?

生理についてオープンに語られるようになった今

今、“生理中の女性は穢れている”なんて発言をする人がいたら、一瞬にして大炎上するでしょう。しかし、長い間、日本では生理中の女性は穢れているといわれてきました。今の10代の人には理解できないかもしれませんが。

生理用品が進化し、生理痛を止める薬が手軽に買えるようになり、女性は生理中でも移動ができ、生理でないときと同じように生活することが可能になりました。もちろん、人によっては生理が辛い方もいらっしゃいますので、これは個人差があるという前提での話です。

しかし、生理用品が作られるようになったのは100年ほどの話で、それまでの女性は生理中の外出がままならない生活を送っていたといわれています。“女性が家に”というのは、そのようなことがあるからです。
そして、歴史を遡ると「血盆経」という言葉があり、“女性が女性特有の出血のために、死後、血盆池(血の池)地獄に堕ちることを説く短文の仏教経典である。”と書かれています。

また、女性の社会進出を促した一番の功労者は「生理用ナプキン」だった
という記事には、
“平安時代に書かれた文献には、「月帯(けがれのぬの)」という布製の生理用品についての記述がある。”と書かれています。

“生理は、妊娠に備えて成熟した子宮内膜が剥がれ落ちて体外に排出される”ことです。それを考えると、なぜここまで言われたのか、と思わざるを得ません。
しかし、今も女性が入れない場所はあります。

女人禁制の場所。

男女は平等であり、LGBTQで多様性を謳う時代になっても、女人禁制の場所はあります。
身近なところでいうと、相撲の土俵です。
2018年4月4日に舞鶴で行われた大相撲の春巡業「大相撲舞鶴場所」で、土俵上で挨拶をしていた市長が倒れたとき、女性が土俵に上がり救命処置を行いました。その女性に対して「土俵から降りてください」というアナウンスがあったことが、物議を醸しました。人の命を守ろうとしている人に対して、土俵は女人禁制だから降りてください、アナウンス。このとき、女性はやはり穢れているのかと思わざるを得ませんでした。

そのときの様子は、以下に書かれています。
会場騒然「そんなこと言ってる場合か!」 救命活動の女性に「土俵から降りて」

2006年には、内館牧子さんが『女はなぜ土俵にあがれないのか』という本を書かれています。そして今も、女性が土俵に上がれない時代は続いています。

そして、2018年の出来事から、以下のような記事が出ています。
「土俵の『女人禁制』再検討へ」(時論公論)

伝統と女性差別の間で揺れていることが感じられます。
そして、理由のひとつである「相撲は元々「神事」を起源としていること。」は、今も続くことです。

今では、御朱印ガールや神社女子が多くいますが、
明治5年に出された、太政官布告第98号(神社仏閣女人結界ノ場所ヲ廃シ登山参詣随意トス)まで、女性が入ることができない神社仏閣や山がありました。
高野山もそのひとつで以下の記事が出ています。
高野山の近代化―女人禁制解除と外国人登山の視点から

今も、女性が入ることができない、山や島はあります。神事に関することが多く、神社好きの私は、それはそのような歴史である、と理解できます。しかし、生理中の女性が不浄である、というのは悲しくも感じます。

今も女人禁制とされている場所。
淡路島・舟木石上神社
石川県・石仏山
奈良県・大峯山
福岡県・沖ノ島 現在は、島自体が御神体とされ、一般の入島が禁じられている。
私は、奈良県の大峯山に行ったことがあります。誰かが管理しているわけでも、柵があるわけでもなく、石の柱に「従是女人結界」と、木の門に「女人結界門」と書かれているだけです。それでもその先には入らない、それが大切だと感じる場所でした。
以下の記事内に写真があります。
奈良、大峰山の女人結界門!この先「女性」立ち入り禁止!!

また、私自身、10代の頃に“生理中は神社に行っていけない”と誰かから聞いたことで、30代くらいまで生理中は神社に行かないようにしていました。その気持ちは実は今もあり、生理中に神社に行ったときは、手を合わせつつ申し訳ありません、と思っている自分がいます。このような記事を書きつつ、自分のなかにもある、思い込みというか、歴史によって植え付けられた思考は、思いもよらぬところで顔を出します。

男性禁制の場所は?

女性禁制の場所があるのに、男性禁制の場所はないのか? と思い調べてみたところ、首里城の御内原エリアは、男性禁制だったようです。

首里城公園、国王や女官らが住んだ男子禁制の「御内原(おうちばら)エリア」を2月1日新規開園。1月28日~31日は無料開放

女性に許されていなかったこと

女人禁制に限らず、日本酒の蔵で、酒造りの一切を取り仕切る杜氏は長い間、男性の仕事とされてきました。これは力仕事だからということが理由だったり、女性が糠漬けを触っているからなど理由があったようです。

そして、私が知る限り、すし職人の方も女性がいないように感じていますので調べてみました。

以下の記事に、
寿司職人に女性が少ないワケ 「手が温かいからダメ」は本当なのか
“寿司屋の板場に立つ女性職人は少ない。寿司をはじめとした職人養成学校「飲食人大学」の広報担当者によれば、世界的なグルメ本『ミシュランガイド』に掲載されたことのある寿司店の中で、女性職人がいる店は「たった1件しかない」という。”と書かれています。

しかし、今は女性杜氏は増えています。そして、女性杜氏が、英国BBC放送の「今年の100人の女性(BBC’s 100 Women 2020)」に選ばれました。このように注目されているのは嬉しいことです。
BBC「今年の100人の女性」に選出 広島「富久長」杜氏

女性が足を踏み入れることができなかった場所が女性にも開かれ、女性の活躍はますます進むと思われます。
かつて女人禁制だった、女性は認められなかったという歴史を知ることで、女性はより頑張れるような気がします。

記事執筆:伊藤緑(広報ウーマンネット 代表)