モノが安いことは自慢か? オリンピック選手が絶賛したコンビニの闇

2021/08/30

モノが安いことは自慢か? オリンピック選手が絶賛したコンビニの闇

日本にいると分からない。格差の理由のひとつはモノの安さかもしれない。

2021年8月25日、ニューヨークでジャスミュージシャンとして活動する大江千里さんの記事を読んだとき、日本の危うさを感じました。そして、日本にとどまっていることが、“井の中の蛙”であるのかもしれないと思いました。いつの間にか日本は、かなり残念な国(海外からしたら便利な国)になっているように感じます。

大江千里氏が「ラーメン1杯2200円」の米国から語る、安い日本の深刻問題

日本は今、これまでにない格差の国です。1970年代の“一億総中流意識”は遥か昔の話になりました。そして、コロナ禍で明らかになった、生きていくために必要とされる仕事を担うエッセンシャルワーカーほど賃金が低いという現実。また、非正規社員やアルバイトやパートで働く人の雇用の危うさや保証の無さについて語られることが多くなりました。そこで、時給で働く人たちの最低賃金を改めて確認してみました。2021年7月に、中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)の小委員会が最低賃金の引上げを決めたので最低自給が変わりました。

最低賃金3%上げ、全国平均930円 28円増を審議会決定

“中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)の小委員会は14日、2021年度の最低賃金を全国平均で28円を目安に引き上げ、時給930円とすると決めた。”と書かれています。この記事に新しい賃金が書かれていますが、1000円を超えているのは東京都と神奈川県だけです。そして、今回の引上げが行われる前は700円代の地域もあり、今回の引上げでやっと800円を超えます。

時給で働くと給与はいくらになるのか?

東京の時給で単純計算をしてみます。
時給1,041円×1週間の労働40時間×4週=166,560円

しかし、この金額がすべて手元に入るわけではなく、税金や社会保険料が引かれます。アルバイトやパートの場合、交通費が支給される保証もありません。

この金額で東京での一人暮らしは厳しいかもしれません(もちろん住む場所や生活スタイルによります)。世帯収入の一部として働くという姿を考えざるを得ません。非正規社員が多い女性、働く女性を支援するという一方で自立が難しいこの金額は非常に残念なことに思えます。支援は底辺から支えてこそ支援ではないのか、と考えています。

年収で考えると、166,560円×12=1,998,720円(あくまで1ヵ月を4週で計算しています)
ここから社会保険料や税金が引かれ、実際に手にできる金額を考えると扶養内で、と考える女性が多いことも分かります。しかし、扶養内で働く場合、いくつかの金額の壁があります。

壁は103万・130万だけじゃない!主婦が損しない収入はいくらまで?扶養内とは・税金の壁の違いを徹底解説

そんなとき、アメリカでは小売業で働く人の意識が高いという話を聞きました。それを裏付けるような記事が出ていました。

ニッポンの「激安自慢」に、アメリカ在住の私が“違和感”を覚えるワケ
以下を読んで、仕事に対して改めて考えました。
時給以外の部分、もちろんこれはほんの一例ですが、こういう可能性さえ日本では考えられないことです。
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ニューヨーク市では2018年、最低賃金が13ドル(約1430円)から2ドルアップし、15ドル(約1650円)に引き上げられた。従業員が10人以下の小さな事業体でも13.5ドル、その翌年の2019年には同様の15ドルにまで引き上げられている。
全米全体で見てみると、いまだ9ドル(約990円)弱の州も存在してはいるがほんの一部だ。ニューヨークやカリフォルニア、ワシントンD.C.など都市部では、どこも13ドル(約1430円)を上回っている。
これらはあくまでも「最低」賃金であり、実情はもっと良い。例えばニューヨークのベビーシッターは1時間16ドル(約1760円)以上は稼いでいると思う。
チップ制や歩合制だが、高級レストランのサーバーが1晩で500ドル(約5万5000円)稼ぐこともざらだ。筆者の知人は、太っ腹な客にあたり、1晩で2000ドル(約22万円)稼いだこともある。
ウーバーの運転を片手間でやっている別の知人は、早朝まで休みなく客を乗せまくり、1晩で5000ドル(約55万円)の稼ぎを出したことも。だから、彼らは仕事を辞めない。
ニッポンの「激安自慢」に、アメリカ在住の私が“違和感”を覚えるワケ
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日本ではコンビニやスーパー、飲食店などで働くのはパートやアルバイトなどの非正規社員が多いです。そして、彼らが店舗を支えています。まさに最低自給で働いている人たちです。そのためなのか、カスタマーハラスメント(カスハラ)が起こります。ハラスメントは、自分が弱者だと思う人間に対して行うといわれています。
個人的に、“お客様は神様”というのは、今はもうないと思っています。もちろん買ってもらうための努力は必要ですが、買ってくれるなら誰にでも売るのではなく、売りたい人に買ってもらいたい、と考えています。販売側にも選ぶ権利があると考えるようになりました。これは、自身の経験(社会を知るために行っている販売の仕事)から感じていることです。

賃金が安いからモノがやすいのか? モノが安いから賃金が安いのか?

もちろんニューヨークの物価や家賃は日本の比ではありません。しかし、その分、販売業や飲食業でも稼げるチャンスがあるのです。オリンピックで来日した選手やメディアの人たちが、日本のコンビニで販売されている商品を絶賛していました。しかし、その裏には闇があります。

以下のような記事が出ています。

東京五輪で海外選手らにコンビニが好評だった理由 人気商品は日本の「レジェンド」だった

「メダルに匹敵」日本のコンビニ。東京五輪に批判的だった米主要紙が一面でついに大絶賛
こちらの記事では、タイトルには入っていませんが、日本のコンビニの2つの闇について書かれています。タイトルに入っていないのが、悲しいことです。
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ケー記者は、コンビニの落ち度にも目を向ける。彼の目を通した問題点は、「信じられないほどの量のプラスチック包装」。
筆者もこれには同意する。日本は見た目の良さが重視されるあまりに、過剰包装が異常に多い。雨の日に紙袋にかけられるビニール袋もアメリカにはない。アメリカにも以前は無駄な包装があったが、環境保全のためにプラスチックが年々削減され、代わりに紙製のパッケージが使われるようになった。
ほかに同記者は、「コンビニの店員は日本の終わりの見えないコロナ戦争の最前線に立たされ、常に感染のリスクを背負っている。その割には、国内でもっとも低賃金の仕事の1つだ」と、劣悪な労働環境にも目を向けた。
「メダルに匹敵」日本のコンビニ。東京五輪に批判的だった米主要紙が一面でついに大絶賛
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こちらの記事では、タイトルに闇の部分も書かれています。
「絶賛」される日本のコンビニ 五輪海外メディアが「死ぬほどおいしい」 重労働など「影」の部分も知って

今、日本の日常を支えている人は、低い賃金でコロナに直面しながら身体を使って働いているのです。

記事執筆:伊藤緑(広報ウーマンネット 代表)